移住者が語る!奥飛騨温泉郷のディープな見どころ

温泉だけで帰るのは、もったいない。奥飛騨温泉郷に移住した私が、暮らしの中で見つけたディープな見どころを3つ紹介します。4.5億年の大地の物語、暮らしを守る砂防、上高地・乗鞍への周遊。知ってから訪れると、旅がまるで変わります。

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移住者が語る!奥飛騨温泉郷のディープな見どころ

温泉だけで帰るのはもったいない、奥飛騨温泉郷の話

「知ってから見る」と「ただ見る」では感動が全く違う。温泉に浸かりながら「この湯は焼岳の恵みなんだ」と思えるだけで、旅の奥行きが変わる。奥飛騨温泉郷は、そういう観光地です。



例えば、富士山があの形、あのスケールになった理由を知ってから観光すると、不思議とワクワクしませんか?中部山岳国立公園に属する奥飛騨温泉郷も同じように「知る」ことで見方が変わり、きっとあなたをワクワクさせるでしょう。

この奥飛騨温泉郷は、日本有数の山岳観光地である上高地や乗鞍岳と隣接しています。日本列島の成り立ちと深く関わり、何億年、何千万年というスケールで今もなお変動し続けている大地です。その成り立ちを知り、3,000m級の山々に囲まれ、同じ目線で眺めてみる。それだけで、旅の景色はまったく違うものになるはずです。



奥飛騨温泉郷は北アルプスの麓に位置するため、標高は高いエリアだと平湯温泉で約1,300mあります。都市部より8度ほど気温が低く、春は1か月遅れて、秋は1か月早く訪れます。私も最初は環境に慣れるのが大変でしたが、この厳しさがあるからこそ、豊かな大自然があり、温泉があり、温かい人情があるのです。



北アルプスと人の営みが交わるこの地を、ディープに楽しんでいただけるような話ができたらと思います。

自己紹介を少し

長野県安曇野生まれ、埼玉県さいたま市育ち。2024年11月に高山市の「地域おこし協力隊」として奥飛騨温泉郷へ移住しました。北アルプスにルーツはあったものの、麓で暮らすことになるとは、人生何があるかわかりませんね。この記事を読み終える頃には、きっと奥飛騨温泉郷に興味を持っていただけるはずです。

奥飛騨ビジターセンター


奥飛騨ビジターセンターは、奥飛騨温泉郷の平湯にあります。平湯ICや平湯バスターミナルからも近く、観光案内所もあるので、まず最初に寄ってみることをお勧めしたい施設です。

奥飛騨ビジターセンターでは、北アルプス(正式名称:飛騨山脈)の成り立ち、そこに生息する生き物、周辺の観光情報など、奥飛騨温泉郷を中心とした展示を見ることができます。博識なスタッフも多いので、気軽に声をかけてみてください。きっと面白い話が聞けますよ。



それでは、展示内容を少しだけ紹介します。きっと足を運んでみたくなるはずです。

奥飛騨温泉郷は、北アルプスの南部に位置しています。4.5億年前までさかのぼると、この地はユーラシア大陸沿岸の浅い海の底でした。そのことを示す化石が、奥飛騨温泉郷の福地温泉近くで発見されています。日本最古の化石ともいわれているコノドントです。


近隣にある飛騨大鍾乳洞も、このことを裏付けています。鍾乳洞の元となる石灰岩は、海底でサンゴ礁などから形成されるものだからです。



約300万年前から、日本列島は東から西へ強い力で押され始め、大地が急速に隆起しました。わずか100万年で数1,000mも持ち上げられた例は世界的にも珍しく、「飛騨の隆起」とも呼ばれるほど、この地の隆起運動は急激なものでした。

この隆起の結果、日本全国に21座ある標高3,000m以上の山のうち、10座が北アルプスに集中しています。約100万年前のマグマだまり(滝谷花崗閃緑岩)が標高2,000m以上に露出しているのも、この急激な隆起があったからこそです。こうした世界的にも珍しい大地のドラマが、まさに奥飛騨温泉郷の足元で起きている。奥飛騨ビジターセンターでは、実際に岩石を見ながらその地質を感じることができます。



そして奥飛騨温泉郷は、この急激な隆起の恩恵を受けている場所でもあります。活火山の焼岳に隣接しているからこそ地下に膨大な熱源があり、地下水がその熱に触れて高温の温泉水になる。それが断層などの割れ目を伝って地表に湧き出してくる。

奥飛騨温泉郷の温泉そのものが、この大地の物語の一部なのです。湯量が豊富で露天風呂の数が日本一といわれる理由も、この大地の恵みにあります。冬でも露天風呂に入れるのは、温泉が高熱で湯量が多いからこそ実現できる賜物です。



こうした大地の恵みを体感できるスポットとして、新穂高ロープウェイもおすすめです。標高2,156mまで一気に上がり、3,000m級の山々を同じ目線で眺めることができます。日本列島の成り立ちを、等身大のスケールで五感を通じて感じられる、数少ない場所だと私は思います。



今回は地理の歴史を中心にお話ししましたが、奥飛騨ビジターセンターでは、地質だけでなく動植物や自然環境など、幅広い学びを体験できます。

きれいな施設なので、ゆった~りするだけでも、寄ってみる価値ありです。


奥飛騨温泉郷の暮らしを守る砂防

ビジターセンターでは大地の成り立ちを紹介しましたが、奥飛騨温泉郷にはもうひとつ、大地と人の関わりを感じられる「砂防」というものがあります。

砂防とは、山の土砂が崩れて大量に流れ出すのを防ぎ、土砂災害を未然に防ぐことを指します。何億年もかけて大地が作り上げた地形の前で、人間が「ここに住み続けたい」と願い、積み上げてきた覚悟の形だと私は思います。

ダムと混同される方も多いと思いますが、ダムは貯水や発電が目的。砂防は、人の暮らしを土砂から守ることが目的です。

奥飛騨温泉郷は、積雪量・降水量ともに多い環境にあります。雪解けもあるため、北アルプスの麓を流れる河川は通年水量が豊富です。一方で、気象が急変することもあり、厳しい環境下では土砂崩れの危険性も高まります。河川が濁れば、特産品である川魚にも影響が及びます。



しかも奥飛騨温泉郷の砂防は、この地域だけの話ではありません。飛騨の山々から流れ出る土砂は、下流の富山県にまで被害を及ぼしてきた歴史があります。大正時代には富山県知事が「飛騨を富山県に編入すべきだ」と主張し、岐阜県側と大論争になったほどです。最終的に政府が直轄で砂防事業を行うことで決着しましたが、それほど砂防は広域的な課題だったのです。



長年にわたる砂防事業の結果、土砂をさらに安定させることができています。温泉の恩恵を受けながらこの地で安心して暮らせるのも、景観や山岳観光を楽しめるのも、砂防があってこそ。奥飛騨温泉郷の暮らしも観光も、砂防なしには語れないのです。



「飛騨の防人百年史」という本があります。少なくとも百年は砂防に取り組み続けてきたことがわかるタイトルです。この奥飛騨温泉郷の砂防という側面を少し勉強してみるのも面白いのではないでしょうか。



そんな砂防とその歴史を学べる砂防塾という施設があるので、ぜひ訪れてみてください。奥飛騨温泉郷には数多くの砂防が点在しています。観光できるものもあれば、山奥にひっそりと佇むものもあります。自然と融合した砂防の景観を、ぜひ体感してください。

日本で有数な山岳景勝地である上高地と乗鞍岳

ここまで大地の成り立ちや砂防の話をしてきましたが、最後にお伝えしたいのは、奥飛騨温泉郷の立地のすごさです。日本を代表する山岳景勝地、上高地と乗鞍岳がすぐ隣にある。この恵まれた立地を活かした旅の楽しみ方を提案できたらと思います。


上高地、実は奥飛騨温泉郷の隣です

正直に言うと、移住するまでは「北アルプスの旅を計画する≒上高地」でした。関東出身の方なら、共感する人も多いと思います。上高地はやっぱり美しい。それは間違いありません。ただ、奥飛騨温泉郷で暮らしてみて思うのは、「上高地だけで帰るのは本当にもったいない」ということです。



奥飛騨温泉郷から上高地まで、バスでわずか約30分。焼岳を挟んだ「山ひとつ隣」に、あの上高地がある。その上高地の余韻を、温泉に浸かりながら味わえる。これ、めちゃくちゃ贅沢ですよね。

バスで森林限界へ、360度パノラマの乗鞍岳

個人的に強くおすすめしたいのが、乗鞍岳です。標高3,026mにもかかわらず、バスで山頂近くまで行けるので、登山経験がなくても気軽に3,000mの世界を体験できてしまいます。



山頂付近の360度パノラマは、上高地とはまったく別物です。上高地が「谷から見上げる北アルプス」だとすれば、乗鞍岳は「山の上から見渡す北アルプス」です。

上高地と乗鞍岳を巡るなら、奥飛騨温泉郷を拠点に

上高地も乗鞍岳もマイカー規制がありますが、奥飛騨温泉郷に車を置いてバスに乗り換えれば、上高地まで約30分、乗鞍岳まで約1時間でアクセスできます。宿に荷物を置いて身軽に出かけられるのも嬉しいポイントです。この立地のポテンシャルは、全国的に見てもなかなかないと思います。やっぱり贅沢な立地ですね。

上高地、乗鞍、松本、新宿、高山市街地を結ぶ交通の要所、アルプス街道平湯がその拠点です。



この立地を活かしたおすすめのバスツアーがあります。上高地と乗鞍岳を1日で周遊できる「乗鞍ライチョウルート周遊バスツアー」で、令和8年度も9月に運行を予定しています(9月20〜23日は運休)。日中は山岳観光を満喫して、夕方に奥飛騨温泉郷へ戻って温泉に浸かる。この流れが最高なんです。



上高地や乗鞍が目的の旅でも、泊まるなら奥飛騨温泉郷。山岳と温泉の両方を味わえるこの拠点を、ぜひ選んでほしいと思います。

ちなみに上高地と乗鞍へE-bikeで行けます。やはり、両方とも自転車で気軽に観光できるのは、奥飛騨温泉郷だけです。


おわりに

ビジターセンターで知る大地の成り立ち、砂防に見る自然と人の共存、そして上高地・乗鞍岳への圧倒的なアクセス。どれも奥飛騨温泉郷に暮らしているからこそ身近に感じている魅力ですが、関東から来た私にとっては、いまだにそのスケールに驚かされています。

奥飛騨温泉郷の温泉が素晴らしいのは、私が言うまでもなく、訪れればすぐにわかるはずです。でも、この記事で紹介したことを少しだけ知ってから訪れると、温泉の感じ方まで変わるはずです。「この湯は焼岳の恵みなんだ」「この景色は何百万年もかけてできたんだ」そう思えるだけで、同じ旅がまったく違うものになります。



そして、もう少し深く知っていくと、大地の成り立ちや砂防の歴史の向こうに、この土地を守り、暮らし続けてきた人々の姿が見えてきます。奥飛騨温泉郷の旅は、大地の物語であると同時に、そこに生きてきた人の物語でもあるのです。

「知ってから見る」と「ただ見る」では、感動がまるで違う。

次に奥飛騨温泉郷を訪れるときは、ぜひ温泉の奥にある物語にも目を向けてみてください。きっと、もっと奥飛騨温泉郷が好きになるはずです。

ライタープロフィール

河野
埼玉県出身。地域おこし協力隊として奥飛騨温泉郷観光協会に所属。移住者の目線で奥飛騨の魅力を発信しています。
河野

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