美景と美味と侘びと寂び『高山市国府町宇津江地区』大切なことを感じなおす旅

古くから「宇津江四十八滝」で知られる高山市国府町の宇津江地区。

実は滝だけじゃない魅力がたくさん詰まった地区で、何度も通った大切にしたい場所ばかりです。

滝、花、民藝、蕎麦、カレー…山から里へと順に辿る小さくて深い旅をご紹介します。

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美景と美味と侘びと寂び『高山市国府町宇津江地区』大切なことを感じなおす旅

滝をめぐる遊歩道は贅沢な癒し空間…宇津江四十八滝

標高約900mから流れ落ちる、大小さまざまな滝の数々。宇津江四十八滝の遊歩道は、登るほどに表情を変える滝と木々や苔の風景が楽しめます。

【宇津江四十八滝:歴史と変遷】

宇津江四十八滝は四十八の滝があるわけではなく、その昔伝説の男「よそ八」が龍神の導きで開き、病を癒やす霊泉として崇められた神秘の滝といわれています。

昭和11年の天然記念物指定を経て、昭和30〜40年代には自然と調和した遊歩道が整えられ、今も変わらぬ清流の音を響かせています。


そんな歴史的背景がありますが…


ここではただただ自然に身をゆだね、深緑の香り、コケやキノコの柔らかな佇まいに包まれて滝の音を聴き、心に元気をチャージしてみませんか?

飛騨高山の市街地からは車で約25分ほどで行くことができます。


◇天然の音響とマイナスイオンに包まれて

上を見上げれば、木々の隙間から差し込む光。強い日差しを避けてくれる木々に守られた遊歩道は夏でも気持ちよく歩くことができます。

大きな滝が近づくと聞こえてくる轟音…滝と滝の間にはせせらぎの音と、それに混じって聞こえてくる鳥たちのさえずり。

目を閉じて音の層に身を委ねてみると、日々の緊張から脳が解放されてリラックスしていくのを感じます。ぜひ深呼吸をしてみてください。


滑りやすいことなどに注意したら子どもでも楽に歩くことができます(むしろ置いていかれました)


一番大きな「王滝」までは約30分、遊歩道の終点まで行くと往復約90分かかります。

終点まで行かれる場合は歩きやすい靴・服装で、水分などお持ちの上でお出かけください。



◇足元のミクロな世界に癒やされる

遊歩道に一歩踏み入れると、そこには清らかな水が育んだ豊かな生態系が広がっています。

岩肌を覆う深い緑の苔や、切り株にひっそりと顔を出すキノコたち。そこには静かで力強い「循環の物語」があります。

また、季節ごとに顔を出す小さな花々は、厳しい自然の中でたとえ目立たぬともひたむきに生きるエネルギーを分けてくれるようです。


2025年9月、この時季まで咲いているのは珍しい「ギンリョウソウ」…葉緑素を持たない植物です


◇たっぷり歩かなくても堪能できる自然

駐車場から最初の滝までは無理なく歩くことができ、最上部まで登り切らなくても十分に景色を楽しむことができます。

全行程を制覇することを目指さなくても、自分が「心地よい」と感じる場所を見つけたら、そこで立ち止まって周りを見渡し、ゆっくりとした時間を楽しんでみてください。

※歩きやすい遊歩道ではありますが、滑りやすい箇所や段差などには十分ご注意ください。また、ルート外への侵入および動植物の採取は禁止されています。


滝への遊歩道の手前にはキャンプ場があり、そこには木々に囲まれ芝生が気持ちいい公園があります。

ちょっとした遊具が水遊びもできるので、子連れでも楽しむことができます。


キャンプ場に隣接したこの公園から少し上ると食堂を併設した売店があり(冬季は休業)、その向かいに滝への遊歩道の入り口があります。

入り口には協力金の受付(自動券売機)があり、その領収書を持って「しぶきの湯 遊湯館」に行くと割引を受けられますので、ぜひ温泉もあわせて利用してみてくださいね。

花を愛でる静かな森…花の森・四十八滝山野草花園

静かに愛でて癒される儚い山野草の「花」たちは「滝」の動的な癒し空間と違う魅力があります

  • 池をよく見ると咲いている「コウホネ」

滝に向かう山道から少し入っていくとまるで別世界のような静寂と穏やかな色彩に満ちた場所があります。

花の森は自然の地形を生かした斜面に遊歩道が整えられ、白樺やナラ、朴の木等の木々の間に 野の花や山の花の群生が広がっています。

花の種類は、5月下旬のクリンソウにはじまり、6月中旬頃から咲くササユリ、7月に見ごろを迎えるアジサイが中心で、時期や場所によってショウジョウバカマ、ミズバショウ、コウホネ、オミナエシ、ショウブ等も目にすることができます。

飛騨の厳しい冬を乗り越えた草花たちは、訪れる人を優しい色で包み込んでくれます。

様々な花が綺麗に咲きそろう理由は、雪解けのころから丁寧に斜面を整えられ、芽吹きのころから花が終わるまで花が咲きやすいように手入れされています。


若い朴の木、木々も代替わりしながら景観が整えられています。


クリンソウは花茎を中心に車輪状に花が咲き、それが下から順番に開花し数段に重なる姿が仏閣の先端部分(九輪)に似ていることから名付けられました。


ササユリは名前の通り葉っぱの形が笹に似ており、花の色は白~淡いピンク色で優し気な雰囲気です。





水辺には葉っぱにぶら下がる不思議な白い泡の塊!!これはなんと「モリアオガエル」の卵です。

時が来るとここから次々とオタマジャクシが水面に向かって落ちていき、その下の池にはおたまじゃくしの塊が現れます。

よく見ると、アマガエルより少し大きなモリアオガエルを見つけることができるかもしれません。


水芭蕉の大きな葉でひとやすみしている(と思われる)モリアオガエル。


この場所は、毎年大切に手入れされ守られてきたため、毎年花を見ることができます。モリアオガエルも安心して暮らしています。

気候変動により、クリンソウが以前より咲き辛くなってきたとも聞きましたが、これからも滝を含めたこの環境ができる限り今の形で残っていくことを願っています。


駐車場や公園近くには毎年なんじゃもんじゃ(ヒトツバタゴ)の花が見られます。



あまり知られていないのですが、花の森の最寄りの駐車場から一段上ると、気持ちのいい芝生の広場があり、北アルプスを望むことができます。

地元でも知らない人が多い場所ですが、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。

民藝、書籍、ずっと持ちたいものに出会える…やわい屋

築150年の古民家を移築した店舗兼住居。引き戸を開けると、日本各地の職人の手によって生み出された「民藝(みんげい)」の世界が広がっています。


【 日本各地の「手仕事」が息づく器や物たち】


店内に並ぶのは、店主一家が自ら各地の作り手を訪ねるなどして選んだ器や道具です。地元飛騨高山の作り手によるものもあります。


用の美…飾るための品ではなく、毎日の食卓で使われてこそ生きる「民藝」の品々。

手にしっくりと馴染む重みや、手仕事ならではのひとつひとつが少しずつ違う揺らぎのある表情は、量産品にはない温もりを感じさせてくれます。

丈夫で使い勝手が良く、年月を経て育っていく器や道具たち。ここで手に取ってひとたび生活に加わると長い年月を共にする大切な相棒になっていくはずです。


お店そのものが、飛騨の歴史とともに歩んできた貴重な空間です。

建物は場所を変え、現在の地で新しい命が吹き込まれました。

重厚感のある梁が支える屋根、2階の独特な造り、使い込まれた床の質感。

窓から差し込む柔らかな光の中で器を眺めていると、不思議と心が凪いでいくのを感じます。

縁側に置かれた座布団は、隣接する田んぼやその先の山々の季節ごとの姿を眺められる特等席です。


器の傍らには、飛騨の歴史や各地の民藝、暮らしや文化にまつわる本も並んでいます。中にはとても古いものや貴重なものもあります。

気になることを店主に質問すると惜しみなくその知識と見解を伝えてくれます(時間があるときに限りますが)。

民藝がそれぞれの地でそれぞれの手で作られたものである一方、店主は言葉を、文章を創り出す人でもあります。

店主が手掛けた「本」もぜひ手に取ってみてください。

古い知恵や新しい知恵、美しい言葉に触れながら、自分自身の生活を見つめ直す贅沢な時間が流れます。


ここで手に入れるものは旅の思い出として、あるいはこれからの自分の暮らしへ、流行に左右されることなく、忙しい毎日にそっと心のゆとりを届けてくれます。

自分だけがわかる良さ。そんなものがひとつふたつあってもいいのではないでしょうか。


2階へと上がる昔ながらの急な階段。途中で1階を覗いてみました。



時折開催される企画展では、期間限定で喫茶スペースが開設され、美味しい焼き菓子が食べられたりします。器も嬉しい♪


1階の展示室「展示室 4’33”」、新しいけど古いような非日常を感じる不思議な空間です。



「やわい屋」で出合うものたちは、どれも作り手の誠実さが伝わってくるものばかり。

そしてその空間は店主夫妻が造る洗練されつつほっこりした雰囲気に包まれています。

一度訪れたらその佇まいにきっと心惹かれるはずです。今の暮らしを少しだけ豊かにしてくれる、そんな「一生の物」を探しに、ぜひ足を運んでみてください。

蕎麦はもちろん、おにぎりも絶品な優しい場所…お休み処「弥助」

毎朝の手打ちされるお蕎麦と、安心の自家産米塩おにぎり
外には鯉とラムネ、優しい味と雰囲気に包まれる、心ごと休めるお蕎麦屋さん


お休み処弥助の店内の水は全て地下35メートルから汲み上げる100%天然水を使用されています。

毎朝の蕎麦打ちから、茹で、洗い、締めの作業まで、たっぷりの天然水を使用して丁寧に作られるお蕎麦は格別です。

水が美味いと蕎麦もご飯も美味しいんですね。



お店を囲むように配置された池には鯉や川魚が泳ぎ、丸太で作られた水場には夏になると冷えたラムネやキュウリなどが登場します。

入り口には可愛らしい手作りの編み物グッズやヘアアクセサリーなどが並び、時間があるときにはお蕎麦を食べ終わると折り紙で作った「コマ」が出てきて会話が弾んだり、夏には朝採れお野菜が並ぶこともある店内。

そんな暮らしを経験したことがなくても、どこか遠い記憶とつながるようななつかしさを感じられます。

今は代替わりをされていますが、優しさも美味しさも変わらぬ、何度でも「帰りたくなる」お店です。


カレーの進化と圧巻の空間とお茶と漫画…閃き堂

オリジナルのスパイスカレーは登場から時を経て進化系が生まれ、漫画ソムリエ厳選の漫画が壁一面に並ぶ店内。
入り口を一歩入った空間から驚かされる、言葉で説明しきれない場所。

  • 外観、裏山ごと素敵な佇まい

最初に足を踏み入れると出会う空間。最初は本当にびっくりしました。立派な梁にポツンとペンダントライトが下がるこの大きな円筒の中に入っていきます。

訪れてみないと分からない感覚ですが、私は最初「試されている!」と感じました(笑)。先に言ってしまいますが、開けるべきは右側のドアです。



扉を開くと、情報量が多すぎる空間が広がっているのですが、入って右側には壁一面の漫画が並んでおり中央にはピアノがあります(このピアノは弾けません)。

江戸時代の古民家を改装しており、天井も床もとてもとても立派で歴史を感じるのですが、いい意味でギャップが大きくて頭での処理が追いつきません。

あわあわしているうちに音楽家でもある店主がセレクトした「音響」につつまれ、一気に非日常の世界に入っていきます。

ちなみに店主は「漫画ソムリエ」(マンガ大賞選考員)でもあるので、時間があれば自分に合う漫画やその日の気分に合う漫画を選んでくれます。


もちろん友達とおしゃべりもOKですが、一人で訪れて漫画の世界に没入するのも正しい過ごし方です。


カウンター席も人気です。


開店した当初、最初にカレーを食べたときは優しくもスパイシーな美味しさに感動しました。辛さの元はたっぷりのショウガ!身体にも効くカレーです。

私の子どもは3歳ごろからこのカレーを美味しいと言って食べていました。

そのオリジナルのカレーは変遷を経て、今は4種類。シンプル、スパイシー、スペシャル、スペーシー!どんな違いがあるのかはぜひ行って確認してみてくださいね。

オリジナルカレースパイスの販売もしています。


こちらは「SIMPLE(シンプル)」、パクチーの有無は選べます。


こちらは「SPECIAL(スペシャル)」、シンプルとベースは同じですが黒ゴマのフムスや玉ねぎのピクルスなどが乗っています。

冬には薪ストーブが焚かれて温められている店内。薪ストーブの前にあるソファは共用で、カレーを待つ間に炎を眺めながら過ごすことができます。

それを店主自ら説明して促してくれるのが嬉しいところ。また冷たいお水と白湯が選べるのも私にとってはかなりポイントが高いです。


スイーツは一種類。完全にオリジナルなその名は「白黒つけた閃き」、チョコバスクチーズケーキとマスカルポーネムースです。間違いない美味しさ♪

タイトルに「お茶」と入れたのは、私は他では出会ったことのない無農薬無化学肥料の万能茶「神目箒茶」と飛騨高山産の無農薬「カモミールティー」がいただけるからです。


実はコーヒーも自家焙煎のスペシャルティコーヒーで豆売りもしており、とても美味しいんですよ。

ビールもヒューガルデンが用意されていたり、飛騨のリンゴジュースがあったり、シンプルなメニューですが大人も子どもも楽しむことができます。


夏には土間の扉が開放され(網戸はあります)、風が通り抜けます。


店主の感性が光るこの空間は、硬くなった頭を柔らかくほぐし、新しい「閃き」を運んできてくれます。

静かなあたたかさが心地よい店主夫妻の人柄。「ゆっくりしていってくださいね」の言葉でいつ行っても安心して過ごすことができます。

心静かに過ごせる休息所でありご褒美の場所。

誰にも邪魔されず本をめくったり、窓の外の緑を眺めたり、日常の中で忘れかけていた「自分自身」と再会できる、そんな優しい時間が流れています。


冬にはストーブと「閃きブルー」(勝手に命名)のひざ掛け。お香の香りは最初異国を感じて、滞在すると馴染みます。

ライタープロフィール

しもや ゆかり
高山生まれいろいろ育ち。7学年差兄妹の子育て中で、2018年から始めたカメラが今ではライフワーク。
地元飛騨高山を愛し、市内の身近な遊歩道や氏神様に通っています。
スキーやカフェ巡り、キノコや野鳥、素敵なもの巡りが好きです。
しもや ゆかり

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