観光地すぎない飛騨高山へ…下二之町・下三之町エリアで温故知新を体感する三店舗をめぐる

飛騨高山の古い町並「上三之町」のにぎわいを背に、安川通りを隔て北の道に入ると、少し空気が変わります。

人通りは少なくなり、土産物屋の色彩から住宅中心の落ち着いた色合いへ…。

下二之町・下三之町の一帯は、古さを活かしつつ新しさを取り入れながらも、観光に寄りすぎない素のままの飛騨高山が残っているエリアです。

今回はそんな下町筋をゆっくり歩きながら、私がよく行く三軒を巡ってみたいと思います。

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観光地すぎない飛騨高山へ…下二之町・下三之町エリアで温故知新を体感する三店舗をめぐる

町の味と時間が始まる場所「糀屋柴田春次商店」(下三之町)

下三之町の通りにある主張しすぎない店構えのお味噌屋さん
人に寄り添い100年以上の時間が積み重ねられてきました

糀屋(こうじや)柴田春次商店は、初代の柴田國次郎氏が飛騨高山の地に店を構えて100年以上、現在は4代目となり商いを続けてこられました。

観光客のニーズに寄りすぎることなく、この町で暮らす人たちの生活に長く寄り添ってきた存在です。



地元のすべてのスーパーでここの定番商品「いなか味噌」や「こうじ味噌」を手に入れることができます。その味は特別な日のものではなく、それぞれの家庭で毎日の食卓に欠かせない存在として静かに受け継がれてきました。安定した味わいには、時代が変わっても揺らがない軸のようなものがあるのではないかと感じます。



一方で、「なべみそ」シリーズなど暮らし方の変化に合わせて生まれた商品もあります。生活の変化に伴い調理の仕方や調味料の役割も少しずつ変化してきました。

その変化に応えるように生まれた商品からは「古いものを守る」だけではなく「続けていく」ための工夫があり、昔のままにこだわりすぎず時代と生活の変化に寄り添ってきたことを感じられます。



朴の木の大きな葉っぱの上で味噌が香ばしく香る「朴葉味噌」は今や飛騨高山の名物の一つとなりました。

受け継がれてきた味を守りながら、今の生活に無理なく馴染む形へ…その積み重ねが、この店の佇まいそのものになっているのではないかと思います。



地元のお米と水で作られる「糀(こうじ)」は、家庭での味噌作りや発酵食品への利用にに欠かせません。冬の定番商品「醤油味噌」は優しい糀の甘味が人気です。

土地の素材と向き合い、手間を重ねることで生まれる味は町の時間そのもののようでもあります。

こうじや柴田春次商店は、「味・香り・やすらぎ」を軸に過去の記憶を今につなぎながら、住む人の日常を静かに支え続けている大切な存在です。


※写真は2026年1月現在のものです。商品や価格は変更することがあります。



訪れた人と香りや美味しさが混ざりあう場所「福太郎」(下三之町)

地元の人と観光客が、お客さんと店主が自然に交わる空気感
懐かしさを感じる味でありながらこだわりの素材で丁寧に作られた美味しいものと温かさに出会う場所

下三之町の端、江名子川沿いの東西の通り沿いに、ふっと温かさを感じる場所があります。紫色の暖簾が目印の「福太郎」さんです。



福太郎は、この町でほぼ毎日お店を開け、日々を重ねることを大切にしているような店。小窓越しにみたらし団子や五平餅を焼いている姿が通りに溶け込みながらも、ほっと一息つきたくなってついつい立ち寄ってしまいます。
地元の常連さんも多く、気づけば隣の席と会話が始まっていることも珍しくありません。初めて訪れた人でもその輪の中に自然と迎え入れられる空気ができあがります。



低農薬で育てた安心の自家製米から作る醤油味の「みたらし団子」や、飛騨では「あぶらえ」と呼ぶエゴマのタレがたっぷりの五平餅は小さな子どもにも大人気です。

自家製の餅を使用したぜんざいなど、すべてがこだわりの素材から作られ、手間を惜しまない優しい味は食べ飽きることがありません。お漬物も使われている白菜や赤かぶも自家製です。



夏には、地元をはじめ国産の梅、桃、イチゴ、スモモなどの果物を使った自家製のシロップから選ぶかき氷が一押し!甘酸っぱくて果肉たっぷり♪贅沢な一品です。

観光の方には絶妙な焼き加減でいただける飛騨牛の串焼きも人気です。



自家焙煎のコーヒーも香り高く美味しく、スイーツも手作り…年齢を問わず美味しいものに巡り合えます。

入り口横の店先には旬の農産物が並び、食べることと作ることの距離が近いのもこのお店の特徴です。

福太郎に腰を下ろしていると、おすすめのスポットや最近の話題をきっかけに観光客と地元の人の区別が薄れていくのを感じることがあります。

懐かしさと美味しさ、作ることと食べること、人と人、それらの間を自然にゆるっと取り持ってくれる場所かもしれません。




蘇った町屋で今大切な感覚にたどり着く場所「おんど/ONDO」(下二之町)

受け継いだ古い町屋を大切にしながら蘇らせた場所
そこに想いの熱量である「温度」が重なって、地域・人・文化が混ざり合いつながっていく「音頭」をとる
この空間との出会いは訪れる人に整える時間と気づきのきっかけを与えてくれます

下二之町を歩いていると、町の空気が少し軽やかになって覗きたくなる場所「おんど/ONDO」。

築約150年の古い町家を建物の佇まいを残しながらリノベーションして、新たな複合施設になりました。

気負いのない入り口で人を迎えてくれるこの場所には、観光の途中にふらりと立ち寄る人もいれば、目的地として足を運ぶ人もいます。どちらにも無理なく開かれているのこの店らしいところです。



おんど には現在4つの顔があります。


一つ目は、空間の中央にドーンと位置する「おんどの台所」。

ナチュールワイン、純米酒、クラフトビール、オーガニックやナチュラルな食材を取り入れた料理を提供されます。

「牛テールのフォー」など、地元の食材を活かしながら多国籍なテイストを取り入れた料理をいただくことができ、 昼間から美味しいアルコールと一緒に楽しむことができるのも嬉しいポイントですね。



二つ目は、外にも中にも開かれたコーヒーショップ「EMBER espresso(エンバースプレッソ)」。

「ここのコーヒーは誰にでも安心して紹介できる」と通訳案内士の友人も絶賛する安定の美味しさで、キャロットケーキやティラミスなどオリジナルの絶品スイーツも一緒に味わうことができます。

コーヒー以外にチャイやホットチョコレートなどのドリンクも間違いないおいしさです。



この二つの飲食の場としての おんど は、静かに美味しさを楽しむ場所であることはもちろん、観光客と地元の人、その境界線が曖昧なまま同じ時間を共有できる場所であるとも言えます。

美味しいコーヒーと料理があるからこそ誰でも入りやすく、長居することで気づきや交流も生まれます。


三つ目の顔は、「ローカルガイドツアー」の拠点。

高山を知り尽くしたスタッフが、e-bike(イーバイク)などを利用して観光ガイドブックには載っていないディープでマニアックな世界へと案内してくれます。

たくさんの人が訪れる観光地ではなく、郊外の農村地域の風景や清らかな川の流れ、山々の景色など、暮らしを感じながら楽しむことができます。



四つ目の顔は「イベントスペース」。

トークセッションや音楽ライブなどの様々なイベントのスペースとして、またポップアップやレンタルスペースとしての活用など、無限の利用方法があります。



自然や文化、地域の営みへと人をつなぎ、ここを起点に中心市街地から少し外へ、そしてまたここへと戻ってくる流れが生まれ始めています。

コーヒーや食事、会話が交わされるこの場所は、下町筋における小さなハブとも言えるでしょう。

過去から続く町並みの中で、今の感覚が無理なく生まれ息づき、この町・人・文化を未来へとつないでいく存在として、立ち寄りたくなる確かな理由がここにはあります。

下二之町と下三之町を歩く

下二之町と下三之町。
ふたつの通りを続けて歩くと、飛騨高山が観光地として整えられる前から、どんな時間を重ねてきたのかが少しだけ見えてくる気がします。

こうじや柴田春次商店の積み重ねた営み、福太郎に流れる人の温かさ、「おんど」に息づく今の感覚。それは温故知新を肌で感じる小さな小さな旅です。


下二之町の文隣堂の店先や、村半の佇まい、高山祭の屋台蔵があり、その間に商店や住宅があり、説明を必要としない風景が静かに続いています。

店を目的地にしなくてもいい。歩くこと自体が、この町を知る行為になります。



軒の連なりや、通りの静けさ、ふとした看板や暖簾に足を止める時間が、下町筋の魅力です。

にぎわいのある上二之町・上三之町から少し外れただけで、飛騨高山の違う表情を見せてくれる下二之町・下三之町は、急がず、比べず、ただ歩くことだけでも歴史と文化と生活を味わえる通りです。

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ライタープロフィール

しもや ゆかり
高山生まれ、子ども時代は転勤族として県内を転々としました。
7学年差兄妹の子育て中で、2018年から始めたカメラが今ではライフワーク!
地元飛騨高山を愛し、市内の身近な遊歩道や氏神様に通っています。スキーやカフェ巡り、街歩きやお祭りも大好きです。
しもや ゆかり

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